柔らかきは 強きなり

水には柔軟性があります。四角の容器に注げば四角の形になるし、丸い容器に注げば丸い形にもなります。
また一方で水には強さもあります。たとえば川の水、上流の方の石は大きくてゴツゴツしており、下流に行けばいくほど石は小さく丸い形になっていきます。川の水は長い年月をかけてあんなに大きな石の角をとって丸く変えていく力があるのです。

他にも、松の木などは硬いものですが、それゆえに台風の時など強風にあおられ倒れたり折れたりします。ところが、しなやかな笹などはあまり折れたりすることがありません。 まさしく柔軟性をもつものが、硬直なものより強いということを表しています。

『イソップ物語』の中に、私の好きな「北風と太陽」という話があります。旅人の着ているマントを脱がせることが出来るのはどちらかと、北風と太陽が競争をします。北風は強い風でもってマントを脱がそうと試みますが、かえって旅人はしっかりとつかまえて放しません。一方 太陽は柔らかく暖かい日差しを浴びさせ、とうとう旅人はマントを脱いだというお話、 ここでもそうですね。

現代は特に強さが求められます。強くなければ生きられないなどといいますが、強さには必ずもろさがともないます。したがいまして、私たちが自然(じねん)に生きていく上では、やはり【柔らかなる心】が大切でありましょう。

阿弥陀さまの願いの中に「触光柔軟(そっこうにゅうなん)」という願いがあります。
仏さまの智慧をいただいたならば、身も心も柔らかになるということ。み教えにふれて、真の強さを秘めた柔らかき人間でありたいものです。

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